2007年6月15日
エコの壁
「エコの壁」(上) 環境問題はなぜ理解できないか――養老孟司さんに聞く -- 日経Economy キーマンインタビューより
環境問題について、「バカの壁」の養老さんがいいこと書いてる。
以下備忘録として(かなり多く)引用。
――環境問題はなぜ理解しにくいのでしょうか (中略)日本の炭酸ガスの排出量は、世界の総量のわずか数%にすぎない。日本人がまったく出さなくても数%しか改善されない。改善に効果を見込める米国、中国の2つは京都議定書に参加していない。だから、日本では温暖化問題は精神運動に終わるしかない。――「できることから始めよう」ではダメ?
環境に配慮した生活を送ることも大切だ。しかしそれは生き方の問題だ。ただ、一人ひとりがどれだけがんばっても、社会システムにはあまり関係ない。そこをはっきり言わないと、かえって悪い影響がある。――アメリカも環境問題に積極的になってきていますが
アル・ゴアの「不都合な真実」は、実は一番大事なことを隠している。炭酸ガスの温暖化問題はアメリカ文明そのものの問題。そこを言っていない。彼は環境問題は倫理問題だというが、石油に依存してきたアメリカ文明そのものが倫理問題に引っかかってくる。――エネルギーに依存した便利な生活の方向転換は大変です
昔は「努力・辛抱・根性」という言葉があった。よりよい生活をするためではなく、根本的には、社会秩序を維持するためにこそ「努力・辛抱・根性」は必要だった。それを消しちゃった。それでも秩序が保てるのは、エネルギーを大量に使っているからだ。ところがここにきて、この仕組みを維持できなくなってきた。それが地球温暖化と石油埋蔵量問題だ。米国は京都議定書に入らなかった。日本は大変なコストをかけて議定書を守るだけでは、国際競争上、大損をすることになる。しかも日本がいくら節約したところで、温暖化にはほとんど関係がないのだから。
――これからポスト京都議定書に向けた駆け引きが本格化します
日本政府が掲げる「2050年に炭酸ガス半減」という目標は、日本だけでやるなら十分に可能な数字だろう。ただ、温暖化防止を本気で考えるなら、アメリカ、中国がコミットしなければもはや意味がない。そのとき大切なのは、相手の土俵に乗らないということだ。「不都合な真実」は確かに温暖化の危機を提示した。しかし、米国が今回も正しい、というところから始めるのは得策ではない。アメリカには「脱石油社会はあなた方の問題でしょう」と問い、中国には「温暖化で困るのはあなた方でしょう」と説得すべきだ。私のようにとことんラディカルに考えておかないと負けてしまう。
なぜなら、日本はもともと石油無しで文明を作ってきた歴史がある国だ。そのために人間をいかに訓練しないといけないかもわかっていた。「モッタイナイ」という言葉もそうだが、新しい社会のモデルは実は日本にこそある。
環境問題、地球温暖化について、政府広告(NHKの「明日のエコでは間に合わない」系)などに同意しながらも違和感があった理由について、養老さんの上記インタビューで実に納得。
納得した点、同意できる点は以下。
- 地球温暖化対策を考える場合、現在もなお大きな原因となっている状況やそのような環境にある国などについての事実を正確に把握し、問題の大きい状況や国に対してこそ実施しなければ、対策として効果はあまり(ほとんど)期待できない。
- そして養老さんのおっしゃるように、アメリカと中国が現在の地球温暖化について大きな原因となっている可能性は高そう。(具体的な数字を持たないので感覚的な判断だが)
- 日本の省エネはかなり限度に近づいているという意見も実に同意。したがって政府などが日本国民に対して更なる省エネを要請するのは、世界全体から考えると非効率的。アメリカおよび中国などに対してこそ主張してほしいと思ってしまう。(政府がそれをアピールできないとすると、政府は、結局、怖い取引先に意見を言えずに社員にばかり無理を押し付けるダメ社長のように見えてしまい情けない)
- アル・ゴアさんの「不都合な真実」に関して、「石油に依存してきたアメリカ文明そのものが倫理問題に引っかかってくる」とする部分、その後ろに書いてある「アメリカが主導してきた自由経済と呼ばれるグローバルシステムには、1つ制限がかかっている。その暗黙の制限は「原油価格一定」ということ。同じ価格で無限に原油が供給されるという前提の上に、米経済は成り立っているわけだ。」と合わせて、なるほど得心。昔からアメリカは石油をたくさん使う文明、程度には認識していたが、石油を自由に使えることを土台に社会が成り立っていると認識すると、原油価格変動に対するアメリカの敏感な反応も理解できる。
- ①石油文明は人間を訓練せず、エネルギーが秩序を維持してくれる、人間が役立たないという前提のシステムが社会を支えている、②そのため人間の質が劣化した、③したがって人間(日本人含む)の劣化は、本来人間がやるべきことをエネルギー(石油)にやらせているのが原因だった、というくだり、実に痛快。「なぜ日本人はダメになったか」系の命題について精神論的な説明をされるより、よほど納得できる。
- ポスト京都議定書フェーズになり国際間の駆け引きが本格化するが、その際「米国が今回も正しい、というところから始めるのは得策ではない」というくだり、実に同意。俺だって愛国者だから?、日本が優れている点については世界の中で堂々とリーダーシップを発揮してもらいたい。そして「モッタイナイ精神」は、まさに世界(特に先進国内)で日本が圧倒的に長い歴史と実践をもっている。したがってリーダーとして世界を主導すべきだ。とりわけ、アメリカは最近になって環境問題にようやく気づいた段階の国だ。そのような国には環境問題のリーダーシップをとらせるべきではなく、むしろ日本が主導して助けてあげるべきだ。
投稿者 shingo : 2007年6月15日 | コメント (0)